1.内分泌の特徴について、外分泌と対比させながら説明できる。
【学習のポイント】
物質を放出する「分泌」には2種類あり、その違いは「導管」の有無と「分泌先」です。内分泌は血液中へ、外分泌は体の外や消化管などへ物質を放出する、という根本的な違いを理解します。
説明
細胞が作った物質を外に放出することを分泌といい、内分泌と外分泌の2種類に分けられます。
- 外分泌(がいぶんぴ)
- 汗腺や唾液腺、消化腺などがこれにあたります。
- 作られた分泌物(汗、唾液、消化液など)が、**導管(どうかん)**という専用の管を通って、体表や消化管内など、体の「外側」にあたる空間へ放出されるのが特徴です。
- 内分泌(ないぶんぴ)
- 下垂体や甲状腺などの内分泌器官が行う分泌形式です。
- 作られたホルモンという物質が、導管を通らずに、細胞から直接周囲の毛細血管に入り、血液によって全身へ運ばれるのが特徴です。ホルモンは、血液に乗って全身を巡り、特定の標的となる細胞にのみ作用します。
内分泌 | 外分泌 | |
分泌物 | ホルモン | 汗、唾液、消化液など |
導管の有無 | なし | あり |
分泌先 | 血液中 | 体表、消化管内など |
2.フィードバックによるホルモン分泌の調節について、甲状腺ホルモンを例に説明できる。
【学習のポイント】
ホルモンの血中濃度は、多すぎず少なすぎず、常に一定に保たれる必要があります。そのための「フィードバック」という、巧みな自動調節の仕組みを理解します。
説明
多くのホルモンの分泌量は、フィードバックという仕組みによって巧妙に調節されています。これは、ホルモンの血中濃度に応じて、そのホルモンの分泌をコントロールする司令塔(視床下部や下垂体)の働きが変化する仕組みです。甲状腺ホルモンを例に説明します。
- 甲状腺ホルモンが低下した場合(ネガティブフィードバック)
- 血液中の甲状腺ホルモンが少ないと、司令塔である下垂体がそれを感知します。
- 下垂体は「もっと甲状腺ホルモンを出すように」という命令である**甲状腺刺激ホルモン(TSH)**の分泌を増やします。
- TSHが甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンの分泌が増加して、血中濃度が正常に戻ります。
- 甲状腺ホルモンが過剰になった場合
- 逆に、血液中の甲状腺ホルモンが多すぎると、下垂体はTSHの分泌を減らします。
- これにより甲状腺への刺激が弱まり、甲状腺ホルモンの分泌が抑えられ、血中濃度が正常に保たれます。
このように、最終産物(甲状腺ホルモン)の量が、その生産過程(TSHの分泌)を調節することで、全体のバランスを保つ仕組みがフィードバックです。
3.主な内分泌器官をあげ、そこから分泌される主なホルモンとその働きについて説明できる。
【学習のポイント】
全身に散らばる主要な内分泌器官の「場所」と、そこから分泌される代表的な「ホルモンの名前」、そしてそのホルモンが体に「何をするのか」をセットで覚えることが重要です。
説明
主な内分泌器官と、そこから分泌されるホルモン、その働きは以下の通りです。
- 下垂体:脳の直下にある内分泌系の司令塔です。
- 前葉
- 成長ホルモン:骨や筋肉に作用し、体の成長を促します。
- 甲状腺刺激ホルモン(TSH):甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンの分泌を促します。
- 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH):副腎皮質を刺激し、コルチゾールなどの分泌を促します。
- 性腺刺激ホルモン(FSH, LH):精巣や卵巣に作用し、性ホルモンの分泌や精子・卵胞の成熟を促します。
- 乳汁分泌ホルモン(プロラクチン):乳腺の発育と、分娩後の乳汁分泌を促します。
- 後葉
- 抗利尿ホルモン(ADH):腎臓での水の再吸収を促進し、尿量を減らします。
- オキシトシン:分娩時に子宮を収縮させたり、乳汁の分泌を促したりします。
- 前葉
- 甲状腺:喉ぼとけのすぐ下にある蝶形の器官です。
- 甲状腺ホルモン:全身の細胞の代謝を活発にし、エネルギー消費を高めます。
- 副甲状腺:甲状腺の裏側にある米粒大の器官です。
- 副甲状腺ホルモン:骨からカルシウムを放出し、血液中のカルシウム濃度を上昇させます。
- 副腎:腎臓の上に乗っている器官です。
- 皮質
- アルドステロン:体内にナトリウムと水分を保持し、血圧を維持します。
- コルチゾール:ストレスに対抗するホルモンで、血糖値を上昇させたり、抗炎症作用を持ったりします。
- 髄質
- アドレナリン、ノルアドレナリン:交感神経と連携し、心拍数の増加や血圧上昇など、体を興奮・緊張状態にします。
- 皮質
- 膵臓(ランゲルハンス島):消化液を作る膵臓の中に島状に散らばる細胞群です。
- インスリン:血液中のブドウ糖を細胞に取り込ませ、血糖値を下げる唯一のホルモンです。
- グルカゴン:肝臓に蓄えられたグリコーゲンを分解し、血糖値を上げるホルモンです。
- 性腺
- 精巣(男性):テストステロンを分泌し、男性らしい体つきなど二次性徴を発現させます。
- 卵巣(女性):**卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)**を分泌し、二次性徴の発現、性周期の維持、妊娠の成立・維持に関わります。