1.5種類の栄養素をあげ、それぞれの役割について説明できる。
【学習のポイント】
私たちが食物から摂取する栄養素が、体を「動かすエネルギー源」「作る材料」「整える潤滑油」という3つの大きな役割を持っていることを、5つの栄養素に分類して理解します。
説明
生命活動の維持に必要な栄養素は、大きく糖質(炭水化物)、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルの5種類に分類されます。特に前の3つは三大栄養素と呼ばれます。
- 糖質(炭水化物):主な役割は、体を動かすためのエネルギー源となることです。特にブドウ糖(グルコース)は、脳をはじめとする多くの器官で中心的なエネルギーとして利用されます(1gあたり4kcal)。
- 脂質:効率の良いエネルギー源として体内に貯蔵されます(1gあたり9kcal)。また、細胞膜の主成分となったり、各種ホルモンの材料になったりします。
- タンパク質:筋肉や臓器、皮膚、酵素、ホルモンなど、体を作る主要な材料となります。通常はエネルギー源としてあまり使われませんが、飢餓時などにはエネルギーとしても利用されます(1gあたり4kcal)。
- ビタミン:体の機能を正常に保つために微量で働く潤滑油のような役割を持ちます。三大栄養素がエネルギーに変わる際の代謝を助ける(補酵素)など、様々な働きがあります。
- ミネラル(無機質):骨や歯の材料となる(カルシウムなど)ほか、体液の浸透圧やpHを調整する電解質として、またヘモグロビンの成分(鉄)となるなど、体の機能を維持・調節するために不可欠です。
2.ブドウ糖からエネルギーが産生される過程について簡単に説明できる。
【学習のポイント】
ブドウ糖がエネルギー(ATP)に変わる過程が、①酸素がなくても行える「解糖系」と、②酸素を使って大量のエネルギーを作る「TCAサイクル・電子伝達系」の2段階で行われることを理解します。
説明
ブドウ糖からエネルギーの通貨である**ATP(アデノシン三リン酸)**が産生される過程は、大きく2つの段階に分かれます。
- 解糖(かいとう)系:
- 細胞の細胞質で行われます。
- 酸素を必要とせず、1分子のブドウ糖が2分子のピルビン酸に分解されます。
- この過程で、**少量のATP(2分子)**が産生されます。
- TCAサイクルと電子伝達系:
- 細胞内のミトコンドリアで行われます。
- この過程には酸素が必要です(好気性代謝)。
- 解糖系で作られたピルビン酸が、アセチルCoAという物質に変換されてTCAサイクル(クエン酸回路)に入り、さらに電子伝達系という過程を経て、**大量のATP(30分子前後)**が産生されます。
生命活動に必要なエネルギーの大部分は、酸素を利用する②の過程で効率よく作られます。
3.脂質、蛋白質からエネルギーが産生される過程について簡単に説明できる。
【学習のポイント】
脂質やタンパク質も、分解されてアセチルCoAなどの共通の物質に形を変えることで、ブドウ糖と同じエネルギー産生経路(TCAサイクル)に入って利用されることを理解します。
説明
脂質やタンパク質も、それぞれ異なる分解過程を経て、最終的にはブドウ糖と同様の経路でエネルギー(ATP)を産生します。
- 脂質からのエネルギー産生:
- 中性脂肪は脂肪酸に分解されます。
- 脂肪酸は、β酸化という過程を経てアセチルCoAに変換されます。
- このアセチルCoAがミトコンドリアのTCAサイクルに入り、大量のエネルギーが産生されます。
- タンパク質からのエネルギー産生:
- タンパク質はアミノ酸に分解されます。
- アミノ酸からアミノ基(窒素を含む部分)が取り除かれ、残った部分がピルビン酸やアセチルCoAなどに変換されます。
- これらがTCAサイクルに入り、エネルギーが産生されます。
4.体内での酸素の移動を、酸素カスケードの概念を用いて説明できる。
【学習のポイント】
酸素が、あたかも滝の水が高い所から低い所へ流れるように、「分圧」という圧力の勾配に従って、空気中から最終目的地である細胞のミトコンドリアまで運ばれる、というイメージを掴みます。
説明
**酸素カスケード(酸素瀑布)とは、酸素が体内を移動する際に、その分圧(圧力)が段階的に低下していく様子を表す概念です。酸素は、この分圧の勾配(圧力差)**に従って、分圧の高い方から低い方へと自然に移動します。
- 大気中の酸素分圧 ↓(吸気・加湿)
- 肺胞内の酸素分圧(約100mmHg):空気と血液が混じるため、大気中より低下します。 ↓(肺でのガス交換)
- 動脈血の酸素分圧(約95mmHg):肺胞から血液に移動する際に、わずかに低下します。 ↓(組織への運搬・放出)
- 組織・細胞の酸素分圧:血液から組織へ酸素が渡されるため、さらに低下します。 ↓(細胞内での利用)
- ミトコンドリア内の酸素分圧(1mmHg以上):酸素が最終的に消費される場所で、最も分圧が低くなります。
この一連の圧力の「滝」のような落差があるからこそ、酸素はスムーズに最終目的地のミトコンドリアまで届けられます。
5.体液の量・電解質組成、酸塩基平衡、浸透圧、および体温を維持する仕組みについて、それぞれ簡単に説明できる。
【学習のポイント】
生命活動の土台となる体内の内部環境(ホメオスターシス)が、複数の器官系(特に腎臓、肺、内分泌系、神経系)の協調した働きによって、常に一定の範囲に保たれていることを理解します。
説明
生体は、細胞が最適な環境で機能できるよう、体内の状態を一定に保つ仕組み(ホメオスターシス)を持っています。
- 体液の量・電解質組成の維持:
- 主に腎臓が、尿の量や成分を調節することで維持しています。
- 喉の渇きによる水分摂取や、抗利尿ホルモン(ADH)による水分の再吸収、アルドステロンによるナトリウムの再吸収など、内分泌系や神経系が密接に関わっています。
- 酸塩基平衡(pH)の維持:
- 体液が酸性やアルカリ性に極端に傾かないよう、pHを狭い範囲(弱アルカリ性)に保つ仕組みです。
- 血液中の緩衝系(瞬時に反応)、肺による二酸化炭素の排出(数分〜数時間で反応)、腎臓による酸やアルカリの排泄(数時間〜数日で反応)という3つの仕組みが連携して調節しています。
- 浸透圧の維持:
- 体液の「濃さ」を一定に保つ仕組みで、主に水分とナトリウムのバランスによって調節されます。
- 体液が濃くなる(浸透圧が上昇する)と、脳がそれを感知して喉の渇きを感じさせたり、抗利尿ホルモン(ADH)を分泌して尿量を減らしたりして、体液を薄めようとします。
- 体温の維持:
- 脳の視床下部が司令塔となり、熱の産生量と放出量のバランスをとることで体温を一定に保っています。
- 熱の産生:食事や運動、ふるえ(筋肉の収縮)などによって行われます。
- 熱の放出:暑い時には、皮膚の血管を拡張させたり、発汗したりして熱を逃します。寒い時には、血管を収縮させて熱が逃げるのを防ぎます。