1.骨格筋の構造と機能について説明できる。
【学習のポイント】
骨格筋が自分の意志で動かせる「随意筋」であり、骨に付着して関節を動かすこと、そして体を動かす以外にも熱産生や栄養貯蔵といった重要な役割を持つことを理解します。
説明
- 構造:
- 骨格筋は、顕微鏡で見ると横縞模様がある横紋筋であり、自分の意志で動かすことができる随意筋です。
- 個々の筋は、筋線維という細長い細胞が多数束になったものです。筋線維の束は筋周膜に、筋全体は筋膜に包まれています。
- 筋の両端は、丈夫な結合組織である**腱(けん)**となって骨に付着しています。
- 機能:
- 運動:骨格筋は一つ以上の関節をまたいで骨に付着しているため、収縮することで関節を動かし、体の運動を生み出します。
- 熱の産生:安静時でも活発に熱を産生し、体温の維持に関わっています。
- 栄養素の貯蔵:血液中のブドウ糖をグリコーゲンとして蓄えたり、飢餓時には筋タンパク質を分解してエネルギー源として利用したりする、栄養の貯蔵庫としての役割も担います。
2.主な骨格筋をあげ、それぞれを自分の身体で指し示すことができる。
【学習のポイント】
体の各部分にある、代表的な筋肉の名称とそのおおよその位置を覚えます。自分の体で確認しながら覚えることが効果的です。
説明
人体には多数の骨格筋がありますが、主なものは以下の通りです。
- 頭部・顔面・頸部の筋:
- 表情筋(前頭筋、眼輪筋、口輪筋など):顔の表情を作ります。
- 咀嚼筋(咬筋、側頭筋など):食べ物を噛むために下顎を動かします。
- 胸鎖乳突筋:首の前面から側面にある大きな筋肉で、首を曲げたり回したりします。
- 体幹前面の筋:
- 大胸筋:胸の大部分を覆う大きな筋肉です。
- 腹直筋:いわゆる「腹筋」で、体幹を前に曲げます。
- 外肋間筋:肋骨の間にあり、息を吸うときに働きます。
- 横隔膜:胸腔と腹腔を隔てるドーム状の筋肉で、最も重要な呼吸筋です。
- 体幹後面の筋:
- 僧帽筋:首の後ろから背中の中央上部を覆う菱形の筋肉です。
- 広背筋:脇の下から腰にかけて広がる大きな筋肉です。
- 上肢の筋:
- 三角筋:肩を覆う筋肉で、腕を横に上げます。
- 上腕二頭筋:「力こぶ」を作る筋肉で、肘を曲げます。
- 上腕三頭筋:上腕の裏側にある筋肉で、肘を伸ばします。
- 下肢の筋:
- 大殿筋:お尻のふくらみを作る大きな筋肉で、股関節を伸ばします。
- 大腿四頭筋:太ももの前面にある人体で最大の筋肉で、膝を伸ばします。
- 下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋):いわゆる「ふくらはぎ」の筋肉で、つま先立ちをするように足首を伸ばします。
3.骨(長骨)の構造と機能について説明できる。
【学習のポイント】
骨が単なる支柱ではなく、血液を作る工場(骨髄)やカルシウムの貯蔵庫としての役割も持つ、生きた組織であることを理解します。特に四肢に見られる長骨の基本的な構造を覚えます。
説明
- 構造:
- 四肢に見られる上腕骨や大腿骨などの長い骨を**長骨(ちょうこつ)**といいます。
- 長骨は、中央の骨幹と、両端の膨らんだ骨端からなります。
- 表面は骨膜で覆われ、その内側は硬く密な皮質骨、骨の内部(特に骨端)はスポンジ状の海綿骨でできています。
- 骨幹の中心には**髄腔(ずいくう)という空洞があり、海綿骨の隙間とともに、血液細胞を作る骨髄(こつずい)**で満たされています。
- 機能:
- 身体の支持:人体の骨格(骨組み)を形成し、体を支えます。
- 運動:骨格筋の付着部となり、てことして働いて運動を可能にします。
- 臓器の保護:頭蓋骨が脳を、胸郭が心臓や肺を保護するように、重要な臓器を囲んで守ります。
- 造血:内部の骨髄で、赤血球、白血球、血小板などの血液細胞を作ります。
- ミネラルの貯蔵:体内のカルシウムの99%を貯蔵しており、必要に応じて血中に放出することで、血中カルシウム濃度を調節します。
4.主要な骨をあげ、それぞれを自分の身体で指し示すことができる。
【学習のポイント】
人体の骨格を構成する、主要な骨の名称と位置を覚えます。
説明
人体の骨格を構成する主な骨は以下の通りです。
- 頭蓋骨:脳を保護する脳頭蓋(前頭骨、頭頂骨など)と、顔の骨格を作る顔面頭蓋(上顎骨、下顎骨など)からなります。
- 脊柱:体の中心軸となる「背骨」で、頸椎・胸椎・腰椎と、その下の仙骨・尾骨からなります。
- 胸郭:胸骨、12対の肋骨、12個の胸椎で構成されるカゴ状の骨格です。
- 上肢の骨:鎖骨、肩甲骨、上腕の上腕骨、前腕の橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)、手の手根骨・中手骨・指骨からなります。
- 骨盤:左右の寛骨(かんこつ)と仙骨で構成される輪状の骨格です。
- 下肢の骨:太ももの大腿骨、膝の皿である膝蓋骨、すねの脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)、足の足根骨・中足骨・趾骨からなります。
5.椎骨と脊柱の構造について簡単に説明できる。
【学習のポイント】
脊柱が、椎骨というブロック状の骨と椎間板というクッションを交互に積み重ねてできていること、そしてその中を脊髄が通る管(脊柱管)が形成されていることを理解します。
説明
- 脊柱(せきちゅう):一般に「背骨」と呼ばれるもので、椎骨(ついこつ)という短い骨がいくつも連なってできています。上から7個の頸椎、12個の胸椎、5個の腰椎、そして仙骨、尾骨から構成されます。横から見るとS字状の生理的彎曲(わんきょく)をしています。
- 椎骨:脊柱を構成する個々の骨です。前方の円柱状の椎体と、後方の椎弓からなり、その間に脊髄が通る椎孔があります。椎骨が連なることで、椎孔は脊柱管という一本の管になります。
- 椎間板:椎体と椎体の間にあり、クッションの役割を果たしています。中心部のゼリー状の髄核と、それを取り囲む丈夫な線維輪からなります。
6.骨盤の構造について簡単に説明できる。
【学習のポイント】
骨盤が、左右の寛骨と仙骨という3つの骨が組み合わさってできた、非常に丈夫なリング状の構造であることを理解します。
説明
骨盤は、体幹と下肢をつなぐ部分にあり、上半身の体重を支え、内臓を保護する重要な骨格です。
左右一対の寛骨(かんこつ)と、中央後方の仙骨(せんこつ)が組み合わさって、頑丈な輪(骨盤輪)を形成しています。
左右の寛骨は、前方で恥骨結合により、後方で仙骨と仙腸関節により、それぞれ連結されています。なお、寛骨は、腸骨・坐骨・恥骨という3つの骨が癒合してできたものです。
7.関節の一般的な構造を説明できる。
【学習のポイント】
関節が、骨と骨を滑らかに動かすための仕組みであり、骨の表面を覆う「関節軟骨」、全体を包む「関節包」、潤滑油である「関節液」がその基本要素であることを理解します。
説明
関節とは、骨と骨とが連結する部分で、体の運動を可能にしています。
典型的な関節は、以下のような構造をしています。
- 向かい合う骨の端(骨端)は、滑らかな関節軟骨で覆われています。
- 関節全体は、**関節包(かんせつほう)**という袋状の膜で包まれています。
- 関節包の内側にある**滑膜(かつまく)**からは、**関節液(滑液)**が分泌され、関節腔(関節内の空間)を満たしています。関節液は、関節の動きを滑らかにする潤滑油の役割と、血管のない関節軟骨に栄養を供給する役割を担っています。
- 関節の周囲は、**靱帯(じんたい)**によって補強され、安定性が保たれています。
8.四肢の大きな関節をあげ、その運動にかかわる主な骨格筋とその作用を述べることができる。
【学習のポイント】
四肢の代表的な関節(肩・肘・股・膝)について、それぞれどのような動きが可能で、その主な動きをどの筋肉が担当しているのかを対応させて覚えます。
説明
- 肩関節:肩甲骨と上腕骨からなる球関節で、非常に可動域が広いです。
- 腕を上げる(外転):主に三角筋
- 肘関節:上腕骨と橈骨・尺骨からなる蝶番関節で、主に曲げ伸ばしが可能です。
- 肘を曲げる(屈曲):主に上腕二頭筋
- 肘を伸ばす(伸展):主に上腕三頭筋
- 股関節:寛骨と大腿骨からなる球関節で、肩関節より可動域は狭いですが非常に安定しています。
- 股を曲げる(屈曲):主に腸腰筋
- 股を伸ばす(伸展):主に大殿筋
- 膝関節:大腿骨と脛骨からなる人体最大の関節です。
- 膝を伸ばす(伸展):主に大腿四頭筋
- 膝を曲げる(屈曲):主にハムストリング(大腿屈筋群)