心電図のノイズについて
1. 交流障害(ハムノイズ)
特徴
- 周波数:50Hzまたは60Hz(電源周波数による影響)
- 波形:等間隔の正弦波(周期的)
- 周期性:一定の間隔で繰り返される
- 振幅:一定(大きく変化しない)
- 心拍との関係:なし(電源由来なので心拍とは無関係)
- 影響範囲:特定の誘導(複数のリードに影響が出ることが多い)
原因
- 電源の影響
- 交流電源(コンセント)の近くにリード線がある
- 電気機器の干渉(蛍光灯、パソコン、モニター)
- 心電図機器の接地(アース)が不適切
- 電極の接触不良
- 皮膚が汗や皮脂で汚れている
- 電極の粘着力が弱い
- 電極が乾燥している
対策
✅ 電源ケーブルとリード線を分離する
✅ 適切なアース(接地)を行う
✅ 電極の密着を確認し、皮膚を清潔にする
✅ 交流フィルター(50/60Hzノッチフィルター)を適用する
2. 高周波ノイズ
特徴
- 周波数:数百Hz~数kHz(交流ノイズよりもはるかに高い)
- 波形:ランダムで細かいギザギザ(鋭くて不規則な振動)
- 周期性:なし(波形が不規則)
- 振幅:不安定
- 心拍との関係:なし(外部の電子機器由来)
- 影響範囲:全体に影響することが多い
原因
- 電磁干渉(EMI)
- 携帯電話、Wi-Fiルーター、電子レンジ、無線機器
- 医療機器(電気メス、透析機、MRI装置など)の影響
- シールドの不適切な機器やケーブル
- 静電気放電(ESD)
- 冬場などで発生しやすい
対策
✅ 電子機器を心電図機器から遠ざける
✅ シールド付きのリード線を使用する
✅ 心電図機器の位置を調整する(電源から離す)
✅ 電源ノイズフィルターを使用する
3. 筋電図アーチファクト(筋電図ノイズ)
特徴
- 周波数:10Hz~500Hz(患者の筋肉の動きにより変化)
- 波形:細かいギザギザでランダムに変化する(振戦がある場合、リズミカルな波形もあり)
- 周期性:不規則(ただし、振戦(パーキンソン病など)がある場合はリズミカルになることも)
- 振幅:バラバラ(患者の動きによって変動)
- 心拍との関係:あり(心拍と混じって見えにくくなる)
- 影響範囲:特定の誘導または全体
原因
- 患者の体動
- 緊張している(不安やストレス)
- 手足を動かしている
- 深呼吸やしゃべっている
- 振戦(パーキンソン病など)
- リズミカルな細かい振動が持続する
- 筋肉の興奮
- 電極が筋肉の上に貼られている
- 低温環境で寒さにより震えている
対策
✅ 患者にリラックスしてもらう(深呼吸、会話を控える)
✅ 電極を筋肉の少ない部分に貼る
✅ 患者の体位を調整する
✅ 温度管理をして寒さによる振戦を防ぐ
比較表
交流障害(ハムノイズ) | 高周波ノイズ | 筋電図ノイズ(振戦) | |
---|---|---|---|
周波数 | 50Hz / 60Hz | 数百Hz~数kHz | 10Hz~500Hz |
波形の特徴 | 規則的な正弦波(周期的) | ランダムな細かいギザギザ | ランダムだが生理的(筋肉由来) |
周期性 | 一定の間隔で繰り返される | 不規則な波形 | 不規則(ただし振戦は周期的) |
振幅 | 一定 | 不安定 | バラバラ |
心拍との関係 | なし(独立) | なし(独立) | あり(心拍と混ざる) |
影響範囲 | 複数の誘導に出る | 全体に影響 | 特定の誘導、または全体 |
主な原因 | 電源・アース不良 | 電子機器・電磁波 | 患者の動き・振戦 |
対策 | 電源と分離、アースを取る | 電子機器を遠ざける | 患者をリラックスさせる |
まとめ
- **交流障害(ハムノイズ)**は、等間隔の波形で、心拍と関係なく一定の周波数で出る(50Hz/60Hz)。
- 高周波ノイズは、ランダムなギザギザ波形で、電子機器や無線機器の影響によるもの。
- 筋電図ノイズは、患者の動きや振戦による影響で、心拍と混ざることがある。
この違いを理解することで、心電図ノイズの原因を特定し、適切な対策を取ることができます。