体性痛とは?
体性痛は、皮膚や筋肉などの体表や体壁の組織が刺激を受けた際に感じる痛みです。体性痛を引き起こす代表的な刺激には、熱刺激、機械的刺激、化学的刺激があります。
- 熱刺激: 例えば、人は42℃を超える温度の水に入ると「熱い」と感じるだけでなく、「痛み」としても認識します。42℃以上の熱刺激は、痛覚を引き起こす温度の閾値を超えるためです。
- 機械的刺激: 圧力や引っ張る力などが痛みを引き起こすことがあります。例えば、皮膚をつねった際、皮膚に加わる圧力が一定の閾値を超えると、それが痛みとして感じられます。
- 化学的刺激: 化学物質が皮膚や組織の痛覚受容体に作用すると痛みを引き起こします。例えば、皮膚に強酸や強アルカリを塗布すると化学的刺激による痛みが生じます。
内臓痛とは?
一方、内臓痛は消化管や実質臓器(肝臓や腎臓など)に関連する痛みですが、これらの臓器自体が直接痛みを感じるわけではありません。肝臓や腎臓の実質部分は痛みを感じませんし、熱刺激に対しても反応しません。また、管腔臓器(胃や腸など)が切られても痛みは感じません。
では、内臓痛とは何かというと、臓器の痙攣や過伸展、腫脹などによって臓器の周囲を取り巻く被膜やその知覚神経が刺激されることで感じる痛みです。例えば、胃や腸が痙攣したり、膨張することで、上腹部や臍周囲、あるいは下腹部にかけて漠然とした痛みを感じることがあります。内臓痛の特徴としては、痛みが周期的に強くなることが多く、胃腸炎や食中毒の際にも見られる症状です。この場合、内科的治療により軽快することが一般的です。
体性痛と内臓痛の違い
「お腹が痛い」という訴えには、内臓痛だけでなく体性痛も含まれる場合があります。腹膜(壁側腹膜、腸間膜、小網、大網など)に分布する知覚神経が刺激を受けると、体性痛が発生します。体性痛は、内臓痛とは異なり、痛みが局所的に感じられ、「痛む場所」を特定できることが特徴です。
例えば、腹膜炎が進行すると、腹膜に炎症が起こり、体性痛として特定の部位に強い痛みを感じるようになります。この痛みは内臓痛のように広範囲ではなく、局所的で、明確に痛む場所を指し示すことができます。進行すると、歩行や触診時に響く痛みが現れ、さらに重篤になると、腹壁が硬直して「板状硬」と呼ばれる状態になります。板状硬は、緊急手術が必要となるケースが多いので、早期の診察と所見の確認が重要です。
確認すべき臨床所見
腹膜炎を疑う場合には、以下の所見も確認する必要があります。
- 反跳痛(ブルンベルグ徴候):腹部を押した後、手を急に離した際に痛みが強くなる現象。
- 板状硬:腹部の筋肉が緊張し、硬くなる状態。
- ローゼンシュタイン徴候:左側臥位で痛みが増強する徴候。
- ロブシング徴候:左下腹部を押すことで右下腹部の痛みが増強する徴候。
これらの所見を確認することが、適切な診断と迅速な治療につながります。