1. 細胞の大きさと構造について説明できる。
【学習のポイント】
- 生命の基本単位: 細胞が、構造と機能の両面で生命の最小単位であることを理解します。人体が約数十兆個の細胞から成り立っていることをイメージしましょう。
- 大きさの比較: 細胞の一般的な大きさは10μm(マイクロメートル)程度です。これは肉眼では見えませんが、ウイルス(例:インフルエンザウイルス)や細菌(例:大腸菌)よりは大きく、タンパク質の分子よりはるかに大きいというスケール感を掴むことが重要です(テキストP.52 図1参照)。
- 基本的な構造: 細胞は、外界と内部を隔てる細胞膜、遺伝情報を格納する核、そして核以外の部分である細胞質から構成されます。細胞質には、特定の機能を持つ様々な細胞小器官が含まれています(テキストP.52 図2参照)。
2. 細胞膜と核の構造と機能について説明できる。
【学習のポイント】
- 細胞膜の機能(バリアとゲート):
- 構造: リン脂質の二重層に膜タンパク質が埋め込まれた構造です。
- 役割:
- 選択的透過性: 細胞内外を隔てるだけでなく、物質の出入りを厳密にコントロールします。酸素や水のように通過しやすい物質と、イオン(ナトリウムなど)やブドウ糖のように通過しにくい物質があります。
- 情報受容: 細胞外からの情報(ホルモンなど)を受け取るアンテナの役割も担います。
- 核の機能(司令塔):
- 構造: 通常は細胞に1つあり、内部には遺伝情報の本体であるDNAが含まれています。
- 役割:
- 遺伝情報の保持: DNAに記録された設計図(遺伝情報)を保管します。
- タンパク質合成の指令: DNAの情報をもとに、生命活動に必要なタンパク質(酵素など)を作る指令を出します。
- 細胞分裂の制御: 細胞の増殖をコントロールします。
3. 染色体、DNA、遺伝子について簡単に説明できる。
【学習のポイント】
これらの関係性を、図書館の本に例えて理解しましょう(テキストP.53 図3参照)。
- DNA: 人体を作るための全ての情報が書かれた「設計図の原本」です。非常に長い二重らせん構造をしています。
- 遺伝子: 設計図(DNA)の中で、特定のタンパク質の作り方など、具体的な一つの情報が書かれている「ページ」に相当します。
- 染色体: 長大なDNAを、核という小さなスペースに効率よく収納するための「本」そのものです。DNAがタンパク質に巻き付いて、コンパクトに折りたたまれた状態です。
4. 主な細胞小器官をあげ、それぞれの機能について簡単に説明できる。
【学習のポイント】
細胞という工場で働く、専門部署の役割を覚えましょう。
- ミトコンドリア: エネルギー(ATP)生産工場。生命活動に必要なエネルギーのほとんどをここで作ります。
- リボソーム: タンパク質合成工場。核からの指令(設計図のコピー)に基づき、アミノ酸を組み立ててタンパク質を作ります。
- リソソーム: 廃棄物処理場。不要になった細胞内の物質や、外部から取り込んだ異物を分解します。
- 小胞体(粗面小胞体・滑面小胞体): 製造ラインと加工場。リボソームが付着した粗面小胞体はタンパク質の製造に関わり、滑面小胞体は脂質の合成や解毒に関与します。
- ゴルジ装置: 梱包・発送センター。小胞体で作られたタンパク質などを加工・選別し、必要な場所へ送り出します。
5. 人体を構成する4種類の基本的な組織をあげ、それぞれの特徴と具体例を説明できる。
【学習のポイント】
同じ機能を持つ細胞の集まりが「組織」です。4つの基本組織の特徴と具体例を関連付けて覚えます。
- 上皮組織:
- 特徴: 体の表面(皮膚)や管状の臓器の内腔(消化管など)を覆うシート状の組織。細胞が密に配列。
- 役割: 保護、分泌、吸収。
- 具体例: 皮膚、消化管の粘膜、汗などを出す腺。
- 支持組織(結合組織):
- 特徴: 組織や器官の間を埋め、結合・支持する。細胞の間に細胞外マトリックス(線維など)が豊富。
- 役割: 支持、結合、保護。
- 具体例: 骨、軟骨、腱、脂肪組織、血液。
- 筋組織:
- 特徴: 収縮する能力を持つ。
- 役割: 身体の運動、心臓の拍動、内臓の蠕動運動。
- 具体例: 骨格筋(意志で動かせる)、心筋(意志で動かせない)、平滑筋(消化管や血管の壁、意志で動かせない)。
- 神経組織:
- 特徴: 刺激に反応し、興奮を伝える。
- 役割: 情報の伝達と処理。
- 具体例: 脳、脊髄、末梢神経を構成する神経細胞やそれを支える神経膠細胞。
6. 体液の主な分画をあげ、それぞれの量と電解質組成について簡単に説明できる。
【学習のポイント】
- 体液の全体量: 成人男性で体重の約60%を占めます。
- 分画と割合(テキストP.55 図4参照):
- 細胞内液 (約40%): 細胞の内部を満たす液体。
- 細胞外液 (約20%): 細胞の外にある液体。
- 間質液 (約15%): 細胞と細胞の間を満たす液体。
- 血漿 (約5%): 血液の液体成分。
- 電解質組成の特徴(テキストP.56 図5参照):
- 細胞外液: ナトリウムイオン (Na+) と塩化物イオン (Cl-) が多い。「外はしょっぱい」と覚えると良いでしょう。
- 細胞内液: カリウムイオン (K+) とリン酸イオン、タンパク質が多い。
7. 酸塩基平衡の概念と、それを調節する仕組みについて説明できる。
【学習のポイント】
- 酸塩基平衡とは: 体液のpHを7.4±0.05という非常に狭い範囲(弱アルカリ性)に保つ仕組みのことです。酵素の働きなど、生命活動に不可欠です。
- 体は酸性に傾きやすい: 日々の代謝活動で酸(二酸化炭素や乳酸など)が常に作られるため、体は常に酸性に傾く危険に晒されています。
- 3つの調節システム(テキストP.56 表1参照):
- 緩衝系(血液): pHの変化を瞬時に和らげる化学的な仕組み。
- 肺による調節: 呼吸の速さや深さを変えて、酸である**二酸化炭素(CO2)**の排出量を調節する(数分〜数時間)。
- 腎臓による調節: 酸(水素イオンH+)を尿中に排泄し、アルカリ性である重炭酸イオン(HCO3-)を再吸収することで調節する。最も強力だが、反応に時間がかかる(数時間〜数日)。
8. 浸透圧および膠質浸透圧の概念と、体液調節における意義を説明できる。
【学習のポイント】
- 浸透圧:
- 概念: 水などの溶媒を通すが、塩類などの溶質を通しにくい「半透膜」を隔てて濃度の違う液体があるとき、水が濃度の低い方から高い方へ移動しようとする力のことです。
- 意義: 主にナトリウムイオンなどの電解質によって作られ、細胞内外の水分バランスを保ちます。細胞が膨らんだり、しぼんだりしないのはこのおかげです。
- 膠質浸透圧:
- 概念: 浸透圧の中でも、特に**タンパク質(主にアルブミン)**によって生じる浸透圧のこと。タンパク質は分子が大きいため、毛細血管の壁を通り抜けにくい性質があります。
- 意義: 血漿中のアルブミンが、血管内に水分を引きつけておく役割を果たします。これにより、循環血漿量が適切に保たれます。肝硬変やネフローゼ症候群でアルブミンが低下すると、膠質浸透圧が下がり、血管から間質へ水分が漏れ出て「むくみ(浮腫)」が起こります。