消防ヒヤリハットデータベースより
https://internal.fdma.go.jp/hiyarihatto/pdf/2017/4104/17I0174.pdf
事案概要
- 事案名: 傷病者のインスリン注射針による針刺し事故
- 発生日時: 平成29年1月17日 午前9時頃
- 場所: 傷病者宅1階居間
- 被害者: 消防隊員(当事者A)
- 傷病者情報: 糖尿病の現病歴があり、インスリン注射(レベミル注イノレット)を使用
- 経緯: 死後硬直の進行状況を観察中、枕元に放置されていたインスリン注射針が左手中指に刺さる事故が発生。
原因
- 直接原因: 傷病者の枕元に放置された注射針の存在に気づけなかった。
- 行動要因: 状況評価への留意が不十分で、「大丈夫だろう」という判断があった。
- 盲点の存在: インスリン注射針などの事故リスクへの認識不足。
被害者対応
- 水道水で患部を洗浄し、アルコールで消毒。
- 家族、上司、クリニックに連絡し、感染症の有無などについて情報提供を受ける。
対策
- 糖尿病患者に関連する事案では、インスリン注射針の存在を確認し、現場での安全意識を高める必要がある。
- 地区MC症例検討会での周知・注意喚起を目的とした症例発表。
針刺し事故が起こった場合の標準的な対応手順は以下の通りです。これは一般的な医療現場や緊急対応に基づいており、日本のガイドラインや現場の状況に合わせて柔軟に対応することが重要です。
一般的な針刺し事故の対応を示します。
1. 直後の対応
(1) 患部の処置
- 流水と石鹸で洗浄
すぐに患部を流水で5分以上洗い流します。石鹸を使用し、可能であればぬるま湯を使います。 - アルコール消毒
洗浄後、消毒用アルコール(70%程度のエタノールなど)で患部を十分に消毒します。 - 患部を絞らない
傷口から血液を無理に絞り出さないようにします。感染のリスクを高める可能性があります。
2. 上司や関係機関への報告
- 職場責任者や上司に報告
医療従事者や緊急対応隊員の場合、速やかに上司や現場責任者に事故を報告します。 - 必要書類の作成
事故発生状況、対応内容、使用された針の種類や患者の情報(可能な範囲で)を記録します。
3. 医療機関での受診
(1) 感染症リスクの評価
- 可能であれば、針刺し事故に関与した針の持ち主(患者)の感染症履歴(HIV、B型・C型肝炎など)を確認します。
- 該当患者の情報が得られない場合でも、感染症のリスクを前提として対応します。
(2) 医療機関での診察
- HIVの予防薬(PEP)
HIV感染の可能性がある場合、曝露後予防(PEP)の抗ウイルス薬を服用します。開始は24時間以内が推奨されます。 - ワクチン接種と免疫グロブリン投与
B型肝炎のワクチンを接種していない場合、HBs抗体が不十分な場合は、免疫グロブリンを投与します。 - 感染検査
針刺し事故後すぐ、そして6か月間、定期的に感染症検査を受けることが必要です。
4. 後のフォローアップ
- 精神的サポート
針刺し事故は精神的ストレスを伴う場合があります。必要であればメンタルヘルスケアの専門家に相談します。 - 教育と予防策の見直し
今後の事故防止のため、現場の作業手順、環境、教育プログラムを見直し、改善を図ります。
参考事項
- 使用済みの注射針の取り扱い
針刺し事故の多くは不適切な針の廃棄や管理から発生します。医療廃棄物の処理手順を再確認してください。 - 事故が多発する状況を把握
盲点となりやすい場所(今回のケースでは枕元)や作業中の注意点を整理して共有します。